Eペース・Tペース・Iペースとは|練習ペースの決め方と表の使い方

VO2max別の一覧表には、予想タイムのほかに「Eペース」「Tペース」「Iペース」という3つの列があります。

これらはジャック・ダニエルズが体系化した練習強度の区分です。何となく速い日と遅い日を作るのではなく、それぞれ別の目的を持った強度として設計されています。この記事では、各ペースが何を指し、表の数字がどう算出されているのかを整理します。

3つのペースの意味

名称強度(VO2maxに対する割合)目的
Eペース約70%有酸素能力の土台づくり、回復
Tペース約88%乳酸性作業閾値の引き上げ
Iペース約98%最大酸素摂取量そのものの向上

一覧表に掲載している数値は、それぞれこの割合に対応する走行速度から算出しています。VDOT(レースタイムから逆算した走力指数)を基準としているため、GPSウォッチが表示するVO2maxの数値ではなく、VDOT列の値に対応しています。

Eペース — 遅く走ることの意味

Eはeasyの頭文字です。会話をしながら走れる程度の強度を指します。

このペースの目的は、心臓のポンプ機能の強化、毛細血管の発達、ミトコンドリアの増加といった、持久力の土台となる適応を促すことです。これらは高強度の練習では得られにくく、時間をかけた低強度の走行で進みます。

多くのランナーが戸惑うのは、Eペースが目標レースペースより遅いことです。サブ4を目指す人の場合、レースペースが1kmあたり5分41秒なのに対し、Eペースは6分23秒。40秒以上遅い計算になります。

「こんなに遅く走って意味があるのか」と感じるかもしれません。しかしこの遅さには理由があります。Eペースは疲労を溜めずに走行距離を確保するための強度です。ここで疲れてしまうと、本当に追い込むべき日の質が下がります。

Tペース — 閾値を押し上げる

Tはthresholdの頭文字で、乳酸性作業閾値を指します。

運動強度を上げていくと、ある地点から血中乳酸が急激に増え始めます。この境界を押し上げることで、より速いペースを苦しくならずに維持できるようになります。マラソンのタイムに直結する能力です。

体感としては「きついが、20分程度なら維持できる」強度です。会話は難しく、しかし全力ではない。この微妙な領域を正確に走ることが求められます。

実施方法としては、20分程度の連続走、あるいは5分から10分の区間を数回繰り返す形が一般的です。

Iペース — 最大酸素摂取量を上げる

Iはintervalの頭文字です。VO2maxそのものの向上を狙う、最も高い強度の練習を指します。

3分から5分程度しか維持できない強度で走り、休息をはさんで繰り返します。1回あたりの時間が短いのは、この強度では長く走れないためです。

なお、この練習で狙っているのは心肺機能の限界を引き上げることです。レースペースで走る練習とは目的が異なります。

表の使い方

一覧表から自分の練習ペースを調べる手順は次の通りです。

  1. 直近のレースタイム(5km、10km、ハーフ、フルのいずれか)を確認する
  2. そのタイムに最も近い行を探す
  3. その行のE・T・Iペースを読む

GPSウォッチのVO2max表示から引くのは避けてください。 時計の値は実際の走力より高く出る傾向があり、そのまま使うと練習ペースの設定が速すぎることになります。表の左端のVO2max列は時計と同じスケールですが、練習ペースはVDOT列に対応しています。

レースに出たことがない場合は、5kmまたは10kmのタイムトライアルを行うのが確実です。

陥りやすい失敗

すべての練習が中間の速さになる

最もよくある失敗です。ジョグが速すぎ、閾値走が遅すぎる。結果として毎日そこそこきついペースで走ることになり、土台も閾値も伸びません。

疲労だけが蓄積して故障のリスクが上がるうえ、得られる適応は中途半端になります。遅い日は遅く、速い日は速く。 このメリハリが練習の質を決めます。

高強度の比率が多すぎる

TペースやIペースは効果を実感しやすいため、つい比率が増えがちです。しかしこれらは負荷が高く、回復に時間がかかります。

一般には、練習全体の大部分を低強度(Eペース)が占め、高強度は一部にとどめる構成が推奨されています。具体的な比率には諸説あり、目的や競技レベルによっても異なります。

表の数値を絶対視する

計算式から導いた数値はあくまで目安です。体調、気温、路面、睡眠状態によって、同じペースでも感じるきつさは変わります。

特にTペースは「20分維持できる強度」という体感が基準です。表の数字どおりに走って明らかに苦しすぎる日は、体感を優先してください。

この記事で扱わなかったこと

具体的な週間の練習メニューや、各ペースの配分比率については、この記事では扱っていません。適切な構成は目的、走力、確保できる時間、故障歴によって大きく変わるためです。

当サイトは数値指標の解説を主とし、個別のトレーニング指導は行っていません。練習計画については、専門書や指導者の助言を参照されることをお勧めします。

まとめ

  • Eペースは土台づくり、Tペースは閾値の引き上げ、Iペースは最大酸素摂取量の向上が目的
  • 一覧表の数値はVDOT基準。GPSウォッチのVO2max表示から引かない
  • Eペースは目標レースペースより遅い。それが正しい
  • 最も多い失敗は、すべての練習が中間の速さになること
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