マラソンの「30kmの壁」は本当にある?|男性の28%がぶつかり、始まりは平均29.6km

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「マラソンは30kmからが本番」。ランナーの間で語り継がれてきた「30kmの壁」は、ただの言い伝えなのでしょうか。約72万人の市民ランナーの記録を分析した研究によると、壁が始まる地点は男性で平均29.6km、女性で平均29.3kmでした。言い伝えの距離は、データで見てもほぼ当たっていたわけです。

壁にぶつかったのは、男性の28%、女性の17%です。男性なら4人に1人を超えます。壁は平均で約10km続き、ぶつかったレースは、その人の自己ベストより平均で30分以上遅いゴールになっていました。

結論:30kmの壁を数字で見ると

項目男性女性
壁にぶつかった割合28%17%
壁が始まる地点(平均)29.6km29.3km
壁が続く距離(平均)10.7km9.6km
壁の間のペース(平均)それまでより40%遅い37%遅い
完走タイム(自己ベストとの差の平均)31.5分遅い33.2分遅い

サブ4のペース(1kmあたり5分41秒)で20kmまで走っていた男性に当てはめると、30km手前から1kmあたり約8分に落ち、その状態が40km付近まで続く計算です。研究はSmyth(2021年)によるもので、2005〜2019年に38都市・270大会を複数回完走した約72万人の記録を使っています。

実際のペースで見る「壁」の目安

この研究では、20kmを過ぎてから「5〜20kmの平均ペースより25%以上遅いペース」が5km以上続いたら、壁にぶつかったと数えています。1kmあたりの実際のペースに直すと、次のとおりです。

5〜20kmを走ったペース(1kmあたり)このペースより遅くなると「壁」壁にぶつかった男性の、壁の間の平均ペース
5分00秒6分15秒7分00秒
5分41秒(サブ4)7分06秒7分57秒
6分00秒7分30秒8分24秒
7分00秒8分45秒9分48秒

真ん中の列が、研究で「壁」と数える境目です(5〜20kmのペースより25%遅い)。右の列は、実際に壁にぶつかった男性が、壁の間に平均でどこまで落ちていたかを示しています(40%遅い)。サブ4ペースで走っていた人なら、1kmあたり2分以上遅くなる計算です。ペースは研究の割合を使ってこのサイトで計算し、秒未満は切り捨てました。

壁にぶつかりやすいのは誰か

  • 男性:どの年代・どの走力で比べても、男性のほうが多くなっていました
  • 若い人:年代が上がるほど少なくなり、45〜49歳が最も少ない結果でした
  • 完走タイムが遅い人:自己ベストが3時間から5時間台へと遅くなるほど、割合が上がっていました。自己ベストが遅めの男性では、40%を超えています
  • 自己ベストの手前の時期:自己ベストを出す前の3年間では36%で、それより前の年(23%)より多くなっています

なぜ男性に多いのか。著者は、男性のほうがペースで冒険しがちなことを理由の一つに挙げています。自己ベストの手前に多いのも、記録を狙って攻めたペースで走る人が増えるため、という見方です。

速く入った人ほど、壁にぶつかっていた

Smythの2018年の研究(約170万人)は、最初の5kmの速さと壁の関係も調べています。最初の5kmを、ゴールタイムどおりの平均ペースから5%速い程度までで入った人は、壁にぶつかることがまれでした。ところが平均ペースより20%速く入った人では、44%が壁にぶつかっています。4時間でゴールする人に当てはめると、5km通過22分45秒の入り方です(この研究では「後半のペースが33%以上落ちた」場合を壁としています)。

入り方と完走タイムの関係はマラソンの「前半の貯金」は得か損か?にまとめています。

壁の正体は何か

研究の中では、体に蓄えた糖(グリコーゲン)が尽きて起きる、というのが従来の説明として紹介されています。ただ、この研究が調べたのはペースの記録だけです。体の中で何が起きていたかは測っておらず、一人ひとりの壁の原因までは分かりません。

注意点

  • 割合は数え方しだい:同じ研究でも、すべての記録で数えると34%でした。GPSの1kmごとのデータを使った別の研究(Berndsenら、2020年)では31.6%で、始まる地点は32.8km前後に集まっていました
  • 自己ベストとの比較:「30分以上遅い」は、壁がなかったら何分で走れたかではなく、その人の直近3年の自己ベストと比べた差です
  • 海外の大会のデータ:記録の多くは海外の大きな大会のものです。気温やコースの違いは区別していません
  • この記事は練習や補給の方法を勧めるものではありません:研究の数字をまとめたものです

30km以上の練習と完走タイムの研究は30km走は何回走ればいい?、同じペースで走った場合の通過タイムはマラソン ペース別 通過タイム表にまとめています。

出典

  • Smyth B. How recreational marathon runners hit the wall: A large-scale data analysis of late-race pacing collapse in the marathon. PLOS ONE, 2021(論文の本文)
  • Berndsen J, Lawlor A, Smyth B. Exploring the wall in marathon running. Journal of Sports Analytics, 2020(論文の本文)
  • Smyth B. Fast starters and slow finishers: A large-scale data analysis of pacing at the beginning and end of the marathon for recreational runners. Journal of Sports Analytics, 2018(論文の本文)

ペースと5km通過の例は、研究の割合を使ってこのサイトで計算したものです。

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