マラソンは何歳まで速くなるのでしょうか。世界記録をもとにした年齢の基準では、男性は38歳、女性は35歳からタイムが落ち始める計算です。ところが、ドイツの市民ランナー約38万人の記録を調べた研究では、55歳より前には、年齢によるはっきりした低下が見られませんでした。
しかも、65〜69歳のランナーの上位4分の1は、20〜54歳のランナーの半分より速くゴールしていました。トップ選手の世界と市民ランナーの世界では、年齢との付き合い方がだいぶ違うようです。
結論:何歳が速いかは、何を見るかで変わる
| 何を見たか | 速さが落ち始める年齢・最も速い年齢 |
|---|---|
| 世界記録をもとにした基準(世界マスターズ陸上、2023年版) | 男性は38歳、女性は35歳から係数が下がり始める |
| 日本の市民ランナーの平均タイム(2022年度) | 男性42歳、女性43歳が最も速い |
| ドイツの市民ランナー約38万人のマラソン(2002〜2009年) | 55歳より前は、はっきりした低下なし |
世界マスターズ陸上(WMA。35歳以上の陸上競技の国際団体)の基準は、各年齢の最高記録の水準から作られています。日本の数字はRUNNETの集計、ドイツの数字はLeykら(2010年)の研究によります。
65〜69歳の4人に1人は、20〜54歳の半分より速い
Leykらは、ドイツで2002〜2009年に開かれた135のマラソンと110のハーフマラソンの記録を集めました。同じ人の重複を除き、マラソン376,313人・ハーフ237,028人を年齢別に比べています。マラソンでもハーフでも、タイムの低下がはっきり表れたのは55歳以上のグループだけでした。それより若い20〜54歳の間では、年齢による有意な差は出ていません。
55歳を過ぎてからも、遅くなり方はゆるやかでした。65〜69歳のランナーのうち速いほうから4分の1は、20〜54歳のランナーの半分より速くゴールしています。年齢が上でも、年下の多くのランナーより速い人は珍しくない、ということになります。
自分の年齢で読む:同じ走力のまま10年たつと
世界記録をもとにしたWMAの基準で、4時間で走る人が「年齢を考えれば同じ走力」を10年後も保った場合のタイムを計算しました。
| いまの年齢 → 10年後 | 男性(いま4時間) | 女性(いま4時間) |
|---|---|---|
| 40歳 → 50歳 | 4時間19分 | 4時間20分 |
| 45歳 → 55歳 | 4時間20分 | 4時間22分 |
| 50歳 → 60歳 | 4時間22分 | 4時間25分 |
| 55歳 → 65歳 | 4時間23分 | 4時間28分 |
| 60歳 → 70歳 | 4時間24分 | 4時間31分 |
この基準では、10年で約19〜31分遅くなる計算です。1年あたりにすると、40代前半の男性で約0.8%、60代前半の女性で約1.2%。ただし、上のドイツの研究のように、市民ランナーの実際の記録では55歳まで年齢による差がはっきりしませんでした。表は「トップ選手と同じ割合で衰えたら」という目安として読んでください。年齢補正の考え方はマラソンの年齢補正とは?にまとめています。
40代・50代から始めた人は伸びるのか
走り始めた年齢と、その後の伸びの関係をはっきり示した研究は、見つかりませんでした。ドイツの研究のアンケート(13,171人)では、50〜59歳の3人に1人、60〜69歳の4人に1人が、5年以内に走り始めた人でした。年齢の高いグループほど、走り始めて間もない人が多く含まれていることになります。
このため、年齢別の平均タイムには、年齢そのものの影響と、走り始めてからの年数の影響が混ざっています。どちらがどれだけ効いているかは、これらのデータからは分かりません。走り始めてからVO2maxがどう変わったかの実測は、VO2maxは何か月で上がるのかにまとめています。
注意点
- 同じ人を追いかけたデータではない:ドイツの研究も日本の集計も、同じ年に走った違う年齢の人を比べたものです。1人のランナーが年をとったときの変化とは限りません
- 完走した人だけのデータ:走るのをやめた人や、レースに出ない人は含まれていません
- WMAの基準はトップ選手の水準:市民ランナー1人ひとりの衰え方がこのとおりになるとは限りません
- 健康の話は扱っていない:この記事は記録と年齢の関係の数字をまとめたもので、何歳まで安全に走れるかなどの医学的な内容は扱っていません
年代別のVO2maxはVO2maxの平均は?、日本の完走タイムはフルマラソンの平均タイムは?で詳しく扱っています。
出典
- Leyk D, et al. Physical Performance in Middle Age and Old Age: Good News for Our Sedentary and Aging Society. Deutsches Ärzteblatt International, 2010(論文の本文)
- World Masters Athletics「2023 WMA Rulebook Appendix B」(マラソンの年齢係数)
- RUNNET「市民ランナーのピークは42〜43歳?」(2024年1月17日)(年齢別の平均タイム)
10年後のタイムは、WMAの2023年版の係数を使ってこのサイトで計算したものです(いまの年齢の係数÷10年後の係数をタイムに掛け、分未満を四捨五入)。


