「トレッドミルは傾斜を1%にすると、屋外と同じきつさになる」。ランニングの解説でよく見かけるこの目安は、もとをたどると、1996年に男性ランナー9人を測った1本の研究に行き着きます。雪で外を走れない季節に室内で練習するランナーにとっては、時速の換算と並んで気になる数字です。
ところが、その研究を速さごとに見ると、時速12kmと約10.5km(1kmあたり5分00秒と5分42秒)では、傾斜0%でも道路とはっきりした差は出ていませんでした。2024年の別の研究では、傾斜を1%にしたほうが、かえって屋外との差が広がっています。1%は本当に必要なのか。換算表のあとで、研究の数字を順に見ていきます。
まず速さそのものは単純な換算。時速10kmは1kmあたり6分00秒、時速12kmなら5分00秒です。
結論:時速とキロ何分の換算表
| トレッドミルの時速 | 1kmあたり | トレッドミルの時速 | 1kmあたり |
|---|---|---|---|
| 8.0km | 7分30秒 | 12.5km | 4分48秒 |
| 8.5km | 7分03秒 | 13.0km | 4分36秒 |
| 9.0km | 6分40秒 | 13.5km | 4分26秒 |
| 9.5km | 6分18秒 | 14.0km | 4分17秒 |
| 10.0km | 6分00秒 | 14.5km | 4分08秒 |
| 10.5km | 5分42秒 | 15.0km | 4分00秒 |
| 11.0km | 5分27秒 | 15.5km | 3分52秒 |
| 11.5km | 5分13秒 | 16.0km | 3分45秒 |
| 12.0km | 5分00秒 | 17.0km | 3分31秒 |
1kmあたりの時間は「3600÷時速」の秒数で、秒未満は切り捨てています。表の速さは、ベルトの速さが表示どおりで、傾斜を考えない場合の換算です。
目標のペースから、設定する時速を出す
トレッドミルの多くは時速0.1km刻みで設定します。目標のペースより遅くならないよう、時速の小数第2位を切り上げると次のとおりです。
| 目標のペース(1kmあたり) | ちょうどの時速 | 設定する時速 | 設定した時速のペース |
|---|---|---|---|
| 7分00秒 | 8.57km | 8.6km | 6分58秒 |
| 6分30秒 | 9.23km | 9.3km | 6分27秒 |
| 6分00秒 | 10.00km | 10.0km | 6分00秒 |
| 5分41秒(サブ4) | 10.56km | 10.6km | 5分39秒 |
| 5分00秒 | 12.00km | 12.0km | 5分00秒 |
| 4分58秒(サブ3.5) | 12.08km | 12.1km | 4分57秒 |
| 4分15秒(サブ3) | 14.12km | 14.2km | 4分13秒 |
サブ4・サブ3.5・サブ3のペースは、このサイトの目標別の記事と同じ値です。ほかのペースの通過タイムはマラソン ペース別 通過タイム表で確かめられます。
「傾斜1%」のもとになった1996年の研究
屋外では、走ると風(空気の抵抗)を受けますが、トレッドミルではほとんど受けません。その分を傾斜で補う目安として広まったのが「傾斜1%」です。もとになったのは、JonesとDoustが1996年に発表した研究でした。
対象はトレッドミルに慣れた男性ランナー9人です。時速約10.5〜18kmの6つの速さで6分ずつ走り、傾斜0〜3%のトレッドミルと平らな道路で、使う酸素の量(VO2)を比べました。
| 速さ(1kmあたり) | 道路と差がなかった傾斜 |
|---|---|
| 時速約10.5km・12km(5分42秒・5分00秒) | 0%と1% |
| 時速13.5km(4分26秒) | 1%だけ |
| 時速約15km・16.5km(4分00秒・3分38秒) | 1%と2% |
| 時速18km(3分20秒) | 0〜3%のどれとも、はっきりした差なし |
すべての速さで道路と差がなかったのは傾斜1%だけで、著者は「時速約10.5〜18kmでは、1%の傾斜が屋外の走りのエネルギーを最もよく表す」と結論づけています。一方で、時速12km以下では、傾斜0%でも道路とはっきりした差はありませんでした。1kmあたり5分より遅いペースで走る人にとっては、1%にするかどうかで大きくは変わらない、という読み方もできます。時速10.5kmより遅い速さは調べられていません。
その後の研究では、結果が分かれている
- Millerら(2019年):トレッドミルと屋外を比べた34の研究をまとめた分析です。ほどほどの速さでは、傾斜0%でも1%でも、酸素を使う量は屋外とほぼ同じでした(差は平均で体重1kgあたり1分間に-0.55mlと+0.37ml)。心拍数ときつさの感じ方は、速いペースではトレッドミルのほうが高く、遅いペースでは低い傾向がありました
- 2024年の研究:よく鍛えた男性14人が時速14kmで5分走ったところ、トレッドミル(傾斜1%)のほうが陸上トラックより酸素を使う量が12.6%多くなりました。別の4人で比べると、1%の傾斜は0%より4.4%多く、傾斜をつけるとかえって差が広がっています。使ったトレッドミルは1機種だけで、著者は機種ごとに確かめるよう勧めています
「傾斜1%で屋外と同じ」は、どのトレッドミルでも、どの速さでも成り立つとは限りません。2024年の研究の著者も、使うトレッドミルごとに確かめるよう勧めています。
トレッドミルの表示はどれくらい正確か
ドイツの大学が研究用のトレッドミル1台を調べた報告では、表示の速さと実際のベルトの速さの差は平均1.5〜1.7%(0.1〜3.9%)でした。乗る人の体重による違いはありません。ジムや家庭用の機種ごとに、表示がどれくらいずれるかをまとめた資料は見つかりませんでした。時計の距離がトレッドミルの表示と合わないのには、別の理由もあります。トレッドミルではGPSが使えず、時計は腕の振りなどから距離を推定しているためです。
注意点
- 研究の対象は鍛えたランナー:どの研究も、トレッドミルに慣れた、走力の高いランナーが中心です。1kmあたり6分より遅いペースでの研究は少なく、傾斜をどうするのがよいかは分かっていません
- 短い時間の比較:研究は5〜6分の走りで比べたものです。長い時間走ったときの違いは、この結果からは分かりません
- 時計のVO2max:Apple Watchやガーミンでは、トレッドミルのランはVO2maxの推定に使われません(VO2maxが更新されないのはなぜ?)
- この記事は練習方法を勧めるものではありません:研究の数字と換算をまとめたものです
冬の雪道でペースがどれだけ落ちるかは冬にペースが落ちるのは走力低下ではない、雪道の練習についての研究は雪道の練習は効果が高いのか、練習ペースの考え方はEペース・Tペース・Iペースとはにまとめています。
出典
- Jones AM, Doust JH. A 1% treadmill grade most accurately reflects the energetic cost of outdoor running. Journal of Sports Sciences, 1996(書誌と抄録)
- Miller JR, Van Hooren B, Bishop C, Buckley JD, Willy RW, Fuller JT. A Systematic Review and Meta-Analysis of Crossover Studies Comparing Physiological, Perceptual and Performance Measures Between Treadmill and Overground Running. Sports Medicine, 2019(論文のページ)
- Should a 1% gradient be used to equate the metabolic cost between treadmill and overground running? Current Issues in Sport Science, 2024(論文のページ)
- Hottenrott K, Schwesig R, Hübel N. Investigation into the validity of the speed indications of the treadmill h/p/cosmos pulsar 3p 4.0. 2005(報告書(PDF))
時速とペースの換算は、このサイトで計算したものです。研究の速さ(秒速)は、時速に直して書いています。


