ケガなどで走れなくなったとき、VO2max(最大酸素摂取量。持久力の土台になる数値)はどれくらいの期間で、どれくらい下がるのか。研究を並べると、10日程度までなら変化がほとんど見られず、2〜3週間で4〜7%、8週間ほどで16〜20%下がり、そこで下げ止まるという結果になります。
結論:休んだ期間ごとの目安
| 完全に休んだ期間 | VO2maxの変化 | 研究 |
|---|---|---|
| 10日 | 変化なし | Cullinane ほか(1986) |
| 2週間前後 | 3.7〜4.7%低下 | Houmard ほか(1992)、Chen ほか(2022) |
| 3週間前後 | 4.2〜7%低下 | Martin ほか(1986)、Coyle ほか(1984) |
| 8週間前後 | 16〜20%低下 | Coyle ほか(1984)、Martin ほか(1986) |
| 12週間 | 8週間以降はほぼ横ばい | Coyle ほか(1984) |
いずれも、持久系の運動を続けてきた人が練習を完全にやめ、実験室でVO2maxを測った研究です。VO2maxの面から見ると、1週間から10日程度の休みで大きく下がる心配は小さいと言えます。はっきり下がり始めるのは2週間を過ぎたあたりからです。
最初の10日は、変化が見られなかった研究がある
練習をやめて10日後にVO2maxを測った研究では、変化は見られませんでした(Cullinane ほか、1986年)。この研究をまとめた総説では、休みの間の日常の活動量に個人差があったことも理由に挙げられています。
ただし、体の中では変化が始まっています。血液の液体成分(血漿)の量は、休み始めて2日以内に減り始めることがあるとされます(Mujika・Padilla、2000年)。この時点ではVO2maxの数値にまだ表れにくい、ということです。
2〜3週間で、4〜7%下がる
14〜15日休んだ研究では3.7〜4.7%、3週間前後では4.2〜7%の低下でした。よく鍛えた選手が4週間未満休んだ研究全体では、4〜14%の低下と幅があります(Mujika・Padilla、2000年)。
注意したいのは、VO2maxより先に「長く走り続ける力」が落ちることです。2週間休んだ長距離ランナーの研究では、VO2maxの低下が4.7%だったのに対し、疲れ切るまで走り続けられた時間は9%短くなっていました(Houmard ほか、1992年)。
一方で、運動を始めて間もない人は下がり方が小さめです。4〜8週間の練習の後に2〜4週間休んだ場合の低下は3.6〜6%で、6〜12週間の練習の後の2週間の休みでは、練習で得た持久力の向上がはっきりとは失われなかったと報告されています(Mujika・Padilla、2000年)。
8週間で16〜20%下がり、そこで止まる
休みが1か月を超えると低下は大きくなり、8週間前後で16〜20%に達します。ただし、Coyleらの研究では56日目以降は横ばいになり、84日たっても、一度も運動習慣のなかった人たちより高い値を保っていました(平均50.8と43.3)。筋肉の毛細血管は84日間休んでも減っていなかったことが、理由として挙げられています。長く休んでも、走り始める前の状態まで戻るわけではありません。
予想タイムに当てはめると
研究の低下率を、一覧表のVO2maxにそのまま当てはめた場合のフルマラソンの予想タイムです。
| 休む前のVO2max | 休む前 | 4%低下 (約2週間) | 7%低下 (約3週間) | 16%低下 (約8週間) | 20%低下 (約8週間) |
|---|---|---|---|---|---|
| 45 | 3時間58分 | 4時間07分 | 4時間13分 | 4時間34分 | 4時間45分 |
| 50 | 3時間38分 | 3時間46分 | 3時間52分 | 4時間12分 | 4時間22分 |
| 55 | 3時間21分 | 3時間28分 | 3時間34分 | 3時間53分 | 4時間03分 |
VO2max 50のランナーなら、2週間の休みで約8分、3週間で約14分、8週間で34〜44分、予想タイムが遅くなる計算です。研究の値は実験室で測ったVO2maxの変化なので、時計の数値やレースタイムが同じ割合で変わるとは限りません。目安として見てください。
あるランナーの実測:10日までの休みではほぼ変わらなかった
記録のそろっている約2年間のApple Watchの記録から、走らなかった期間の前後で時計のVO2maxを比べました。この期間で最も長い休みは10日でした。
| 走らなかった期間 | 時計のVO2max(休む前 → 休んだ後) |
|---|---|
| 7日(2kmだけ走った日を含む) | 50.3 → 50.6 |
| 8日 | 41.4 → 41.2 |
| 10日 | 46.0 → 45.2 |
変化は最大でも0.8ポイント(約2%)で、上がったこともありました。10日の休みで変化がなかったという研究と同じ傾向です。これより長く休んだ記録はないため、数週間以上休んだ場合の時計の数値の動きは、このデータからは分かりません。
時計の数値は、休まなくても下がることがある
同じランナーの記録では、走り続けていた時期にも時計の数値が下がっていました。
- 冬の約6週間:52.4 → 50.1(約4%低下)。北海道の雪道を走っていた時期です
- フルマラソン後の約2週間:54.0 → 52.2(約3%低下)。レース後も週に数回走っていました
時計は、走ったときの心拍数と速さからVO2maxを推定します。雪道やレースの疲れでペースが落ちると、心肺の能力が変わっていなくても推定値が下がることがあります。休んだ後に時計の数値が下がっていても、その全部が休んだせいとは限りません。雪道でのペースの変化は、冬のペース低下の記事で扱っています。
休まずに走り続けていても時計の数値が下がった6回の記録と、その理由はVO2maxが下がるのはなぜ?にまとめています。
この冬の値を月ごとに並べた結果は冬になるとVO2maxは下がる?にまとめています。
注意点
- 研究の多くは、よく鍛えた少人数の持久系の選手を対象に、練習を完全にやめた場合を調べたものです。市民ランナーや、練習量を減らしただけの場合は、下がり方が違う可能性があります
- この記事はVO2maxという数値の変化を扱ったものです。ケガの治療や、いつから走り始めてよいかは、医師などの専門家に相談してください
- 実測は1人分のデータで、10日を超える休みの記録はありません
VO2maxが上がるまでにかかる期間は、VO2maxが上がるまでの期間の記事で扱っています。
出典
- Coyle EF, et al. Time course of loss of adaptations after stopping prolonged intense endurance training. Journal of Applied Physiology, 1984
- Mujika I, Padilla S. Detraining: loss of training-induced physiological and performance adaptations. Part I. Sports Medicine, 2000
- Codella R, et al. Cardiorespiratory and metabolic consequences of detraining in endurance athletes. Frontiers in Physiology, 2023(Cullinane 1986、Houmard 1992、Martin 1986、Chen 2022の数値はこの総説による)
予想タイムはDaniels-Gilbertの式、時計の数値(生理学的なVO2maxの尺度)との換算はCooperの式によります。


