厚底カーボンシューズで何%速くなる?|研究の数字をマラソンのタイムに換算、サブ4の場合も

ランニンググッズ

厚底カーボンシューズは、同じ速さで走るのに必要なエネルギーを2〜4%ほど減らすという研究結果があります。
このサイトの計算式でマラソンのタイムに換算すると、4時間のランナーで約5〜8分に相当します。
ただし、これは実験室の値をそのまま当てはめた理論上の数字です。

厚底カーボンシューズに興味がある、あるいは既に履いているが

「数値上はどれくらい効果があるのだろう?」

そう思われた方は、ぜひご一読下さい。

結論:研究の数字とマラソンへの換算

いつものマラソンのタイムエネルギー2.5%減エネルギー4%減
3時間00分約4分短縮約6分短縮
3時間30分約4分短縮約7分短縮
4時間00分約5分短縮約8分短縮
4時間30分約5分短縮約9分短縮
5時間00分約6分短縮約9分短縮

2.5%は市民ランナーを対象にした研究(Bolliger ほか、2026年)、4%はNikeの試作シューズを調べた研究(Hoogkamer ほか、2018年)の値をもとにしています。
換算方法と、この数字の限界は後の節で説明します。

何が「速くなる」のか:ランニングエコノミー

研究で測っているのは、ランニングエコノミー(同じ速さで走るときに使う酸素やエネルギーの量)です。
少ないエネルギーで同じ速さを出せれば、同じ体力でより速く走れます。
VO2maxが「エンジンの大きさ」なら、ランニングエコノミーは「燃費」にあたります。シューズが変えるのは、このうち燃費のほうです。

研究の数字

研究対象結果
Hoogkamer ほか(2018年)ランナー(Kippらの総説による要約)Nikeの試作シューズ(のちのヴェイパーフライ4%)で、既存のレース用シューズ2足と比べてランニングエコノミーが平均4%改善
Bolliger ほか(2026年)市民ランナー14人時速7.5〜12kmで、厚底カーボンシューズは従来型のシューズより2.3〜3.1%改善。遅い速さでも効果の大きさはほぼ変わらなかった
Hébert-Losier ほか(2022年)男性ランナー18人。参加者が普段履いているシューズと比較4.3〜4.4%改善。3km走のタイムは2.4%速かった。18人中11人(61%)が厚底カーボンシューズで最も速く走れた
Joubert ほか(2023年)重さをそろえた、プレートのないレース用シューズと比較時速12kmで1.4%改善。時速10kmでは0.9%

時速7.5kmは1kmあたり8分、時速12kmは5分のペースです。
「遅いランナーには効果が小さいのでは?」という見方もありましたが、2026年の研究では、遅いペースでも2%以上の改善が見られました。

効果の大きさは、何と比べるかで変わります。もともと軽いレース用シューズと比べると差は1%前後ですが、普段のシューズや従来型のシューズから履き替える場合は、2.5〜4%に近い比較になります。Hébert-Losierらの研究では、18人中7人は別のシューズのほうが速く、効果の大きさには個人差がありました。

%の改善はタイムでどれくらいか

エネルギーが4%減っても、タイムが4%縮むとは限りません。
速く走るほど必要なエネルギーが急に増えるためです。
Kippらの分析(2019年)では、マラソン2時間03分前後の速さでは、4%の改善はタイムでは約2.6%の短縮になります。
一方、4時間30分のランナーでは、1%の改善が約1.2%(約3分)の短縮になるとしています。
遅いランナーほど、%の改善がそのままかそれ以上にタイムに表れやすいという結果です。

結論の表は、このサイトの予想タイムに使っている速さと酸素摂取量の式(Daniels-Gilbertの式)で換算しました。
この式で計算すると、4時間30分のランナーで1%の改善は約2分の短縮で、Kippらの分析(約3分)より小さめに出ます。
表の値は控えめな見積もりで、実際の効果はこれより大きい可能性もあります。

大会で使えるシューズの厚さの規則は陸上の厚底シューズの規定は?にまとめています。

サブ4の場合:必要な走力はどう変わるか

サブ4のペース(1kmあたり5分41秒)は、時速にすると約10.5kmで、上の研究で調べられた速さ(時速7.5〜12km)の範囲に入ります。シューズの効果の分だけ走力が上がったとして、サブ4に必要な走力を計算しました。

シューズの効果なし2.5%4%
時計のVO2max44.643.542.9
VDOT37.937.036.4
10kmのタイム52分21秒53分28秒54分08秒
ハーフのタイム1時間56分06秒1時間58分33秒2時間00分02秒
シューズなしでのフルマラソンの予想4時間00分4時間04分4時間07分

たとえば4%の列は、「10kmを54分08秒で走れる走力があれば、エネルギーが4%減るシューズで4時間を切る計算になる」という意味です。秒未満は切り捨てています。

シューズなしでの予想効果2.5%の場合効果4%の場合
3時間55分3時間50分3時間47分
4時間00分3時間55分3時間52分
4時間05分4時間00分(4時間をわずかに超える)3時間57分
4時間10分4時間05分4時間02分
4時間15分4時間09分4時間06分
4時間20分4時間14分4時間11分

分未満は切り捨てています。予想が4時間10分以上の場合、この計算ではシューズの効果だけでは4時間に届きません。シューズなしでの予想は、VO2max別の一覧表かVDOT計算機で出せます。

4%の効果は、時計のVO2maxでいえば約1.7ポイント(44.6と42.9の差)にあたります。あるランナーの時計の記録では、42.9から44.6まで上がるのに約2か月かかりました。ただし、時計の値の伸び方は、人や時期によって大きく違います。暑さやペース配分の影響もシューズとは別にあり、あるランナーの真夏のフルマラソンでは、時計の値からの予想より約14分遅い結果でした(Apple WatchのVO2maxで予想タイムは当たるのか)。サブ4に必要な走力の詳しい内容は、サブ4に必要なVO2maxはいくつ?にまとめています。

注意点:この数字の限界

  • 実験室の値:研究は実験室で、短い時間走って測ったものです。42kmのレースで、同じ割合の効果が最後まで続くかは確かめられていません
  • 個人差:表の値は研究参加者の平均です。人によって効果の大きさは異なると考えられます
  • シューズごとの差:「厚底カーボン」と呼ばれるシューズの中でも、作りは製品ごとに違います。研究で使われた製品と同じ効果が、別の製品でも得られるとは限りません
  • このサイトでの検証はしていません:この記事は研究の数字をまとめたもので、運営者が複数のシューズを履き比べた結果ではありません

シューズを替えたときの予想タイムを考えるときは、いつものタイムから計算したVDOT計算機の値から、上の表の分を差し引くのが目安になります。
目標タイムごとの必要な走力は、サブ4に必要なVO2maxなどの記事にまとめています。

シューズの重さだけでタイムがどれだけ変わるかは、シューズの重さでタイムはどれだけ変わる?で計算しています。

各社の最新モデルの重さ・厚さ・価格は、ランニングシューズはどう比べる?で比べています。

使い続けると効果がどれだけ落ちるかは、ランニングシューズは何kmで替える?で計算しています。

出典

タイムへの換算は、Daniels-Gilbertの式(速さと酸素摂取量の関係)で、同じ酸素摂取量で出せる速さを計算したものです。

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