Tペース(「ややきつい」と感じる閾値のペース)前後の練習を中心にしても、速くなった研究結果はあります。
ただし、練習を積んだランナーを比べた研究では、ゆっくりした練習の割合を多くしたグループのほうが、伸びが同じか大きい結果が多く出ています。
あるランナーは、ジョグをほとんどせず、走った距離の7割以上がジョグとTペースの間の速さでしたが、1年でフルマラソンのタイムを約28分縮めています。
この記事は、研究と実測の数字を並べたもので、練習の方法を勧めるものではありません。
結論:研究の数字
| 研究 | 対象 | 比べた練習 | 結果 |
|---|---|---|---|
| Esteve-Lanao ほか(2007年) | よく練習を積んだランナー12人、5か月 | ゆっくりが約8割 と 中くらいの強度が約25% | 約10kmのタイムが、157秒短縮 と 122秒短縮。ゆっくり中心のほうが大きく伸びた |
| Muñoz ほか(2014年) | 市民ランナー30人 | ゆっくりと高強度に分けた練習 と 中くらいの強度中心 | 10kmのタイムが5.0%短縮 と 3.6%短縮。差ははっきりしなかった |
| Stöggl・Sperlich(2014年) | 持久系の選手41人、9週間 | 4種類の練習を比較 | 閾値中心のグループはVO2maxが変わらず、ゆっくりと高強度に分けたグループは11.7%上がった |
| Filipas ほか(2022年) | よく練習を積んだ男性56人、16週間 | 練習の配分を4通りで比較 | 5kmのタイムは0.6〜1.5%短縮。どのグループも伸びた |
中くらいの強度(Tペース前後)を中心にしたグループも、どの研究でもタイムは縮んでいます。
ただ、伸びの大きさでは、ゆっくりした練習の割合が多いグループと同じか、やや小さいという結果でした。
対象は、よく練習を積んだランナーや選手が中心で、マラソンを直接調べた研究ではありません。
マラソンを走る人は、どんな配分で練習しているか
Stravaに記録されたマラソン15万回分の、レース前16週間の練習を調べた研究(Muniz-Pumaresら、2025年)では、平均でゆっくり49.0%、中くらい35.3%、きつい15.7%でした。
タイムが速いグループほど、ゆっくりした練習の割合が大きくなっていました。
あるランナーの実測:ジョグがほとんどない
2回のフルマラソンを走ったあるランナーの、レース前16週間の練習を、1回ごとの平均ペースで分けました。
基準は、それぞれのレースの結果から計算したEペース(ジョグのペース)とTペースです。
| 走った距離の割合 | 1回目(サブ4) | 2回目(3時間31分台) |
|---|---|---|
| Eペースより遅い | 0% | 3% |
| EペースとTペースの間 | 76% | 71% |
| Tペースより速い | 24% | 25% |
研究のマラソンランナーの平均(ゆっくり約5割)と比べると、ジョグにあたる練習がほとんどない、偏った配分です。
それでも、1回目から2回目までの約1年で、フルマラソンのタイムは約28分縮みました。
レースの結果から計算したVDOT(走力の指標)は、37.9から43.9に上がっています。
この実測から言えること、言えないこと
- 言えること:Tペース前後の練習が中心でも、タイムが大きく縮んだ例が少なくとも1つある
- 言えないこと:別の配分で練習していたら、もっと伸びたかどうか。
この1年は、走行距離も週約29kmから約36kmに増えていて、何が効いたのかは分けられない - 研究との関係:研究では、ゆっくりした練習の割合が多いほうが、伸びが同じか大きい結果が多い。
1人の実測は、この結果を否定するものではない
集計の方法と注意点
- ペースは1回の練習全体の平均で分けています。1回の中で、ゆっくりした部分と速い部分が混ざっていても区別できません
- 研究によって「ゆっくり」「中くらい」「きつい」の基準が違うため、研究の割合とこのランナーの割合は、厳密には比べられません
- EペースとTペースは、このサイトの計算式(VDOTの70%と88%に対応する速さ)で、それぞれのレースの結果から計算しました
Eペース・Tペースの意味はEペース・Tペース・Iペースとは、このランナーの走行距離はサブ4の月間走行距離は何km?にまとめています。このランナーの2年分の練習の強度分布は、練習の8割が中間の速さだったで集計しています。
出典
- Esteve-Lanao J, Foster C, Seiler S, Lucía A. Impact of training intensity distribution on performance in endurance athletes. Journal of Strength and Conditioning Research, 2007
- Muñoz I, et al. Does polarized training improve performance in recreational runners? International Journal of Sports Physiology and Performance, 2014
- Stöggl T, Sperlich B. Polarized training has greater impact on key endurance variables than threshold, high intensity, or high volume training. Frontiers in Physiology, 2014
- Filipas L, Bonato M, Gallo G, Codella R. Effects of 16 weeks of pyramidal and polarized training intensity distributions in well-trained endurance runners. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 2022
- Muniz-Pumares D, et al. The training intensity distribution of marathon runners across performance levels. Sports Medicine, 2025
ランナーの記録は、Nike Run Clubで記録した走行データを集計したものです。VDOTとペースはDaniels-Gilbertの式によります。


